2020.08.31 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「男性の育児参加が必要」※記事有男性の育児参加が必要 新型コロナウイルスは女性の就労にも影響を与えている。 8月11日付経済面の特集記事が目を引いた。堅調だった女性の就業者数は4月に減少に転じ、不安定な就労環境に置かれていることや家事・育児の偏りがあることで深刻な問題が出てきている。女性は男性に比べて非正規で働く人の割合が2倍以上。正規よりも賃金が低く、こうしたときに影響が出やすいのだ。シングルマザーなど収入減が貧困に直結する人が仕事を失うケースも多いそうだ。 東京大大学院発達保育実践政策学センターの調査では、コロナ禍で1日の育児時間が平均5時間以上増えた割合は母親47・1%に対し、父親29・3%。仕事を休んだ割合も母親24・9%、父親5・0%と開きが顕著だった。家事・育児の負担が女...
2020.06.15 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「的確な問題提起に期待」※記事有的確な問題提起に期待 新型コロナウイルスの感染拡大で、学校現場は長期間にわたる休校を余儀なくされた。休校自体はやむを得ないものであるが、それにより、さまざまな問題が表面化した。 全ての子どもに、学習の機会が等しく保障されるべきだが、地域や学校、家庭によって授業の進み具合に格差が生じ、中でも恵まれない環境の子どもたちが一層、厳しい状況に置かれた。5月11日付「論説」が指摘するように満足に食事ができない児童の命綱となる給食はなく、自宅にいられない少女が性被害に遭う心配もあるのだ。 さらに親が休業や在宅勤務となり、家族が一緒に過ごす時間が長くなることで、児童虐待やドメスティックバイオレンス(DV)が起こりやすくなっている。 虐待やDVの背景には、貧困や孤立な...
2020.03.17 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「育児と仕事 両立後押しを」※記事有育児と仕事 両立後押しを 1月3日付朝刊。県が新年度から、女性の就労環境整備に向け、技能習得の促進や就農研修場の整備など支援策の充実を検討している、という記事が掲載された。広瀬勝貞知事のコメントには「女性が存分に活躍できるよう、子育て支援と同時に、仕事を選択し、能力が発揮できる環境づくりに力を入れる」とあった。新年早々、良いニュースに触れ、うれしく思った。 総務省の2017年就業構造基本調査では、県内の女性の就業率は25~29歳で8割を超えるが、30歳代では7割台に低下する。出産や子育てで離職しているためとみられ、これは育児負担が女性に偏っている実態を表している。女性が子育てをしながら仕事を続けるためには、社会全体で支える仕組みがとても重要だ。 厚生労...
2019.12.03 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「子どもの『生きる力』守る」子どもの「生きる力」守る平均的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合「子どもの貧困率」は、日本では13・9%で、7人に1人に上る。ひとり親家庭に限ると半数を超え、先進国の中で高い水準だ。 10月16日付朝刊の「教育交差点」に首都大学東京の阿部彩教授の寄稿文が掲載された。親の経済状況により子どもの学力に格差がある問題を取り上げ、筆者らの調査では生活に困窮する世帯の小学5年が約3割、中学2年の約5割が「学校の授業が分からない」と答えたという。授業が分からないまま教室に座っているのはつらく、この状況が何年も続くと自己肯定感が低下し、逆境をはね返す「生きる力」まで失うと指摘している。 家庭の困窮や親の労働環境の変化で、朝食も問題となっている。文部科...
2019.09.10 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「子育て、みんなで支えて 」子育て、みんなで支えて女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率。2018年は1・42で、3年連続の減少となった。出生数も統計開始以来、最少となる91万8397人となり、こちらも3年連続で100万人を割り込んだ。 少子化の背景には、晩婚化や共働き世帯の増加、若い世代が経済的に余裕がないなど、さまざまな要因がある。子育てがしやすい環境を整えることで、多少なりとも抑制できると思うが、それには地域や職場など社会全体で支える仕組みが必要だ。 4月に中津市蛎瀬にオープンした「なかつ病児保育室セカンド・マム」は、子どもを病気発症時から回復期まで、預けることができる市内初の施設。共働きやひとり親家庭にとって大変心強い存在だ。また、第一交通産業グループは...
2019.06.24 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「障害者の実情取り上げて」障害者の実情取り上げて盲導犬を連れていることを理由に入店や施設利用を拒否された経験のある視覚障害者が52・9%に上ると4月3日付朝刊で報じられた。盲導犬を育成するアイメイト協会の調査で、塩屋隆男代表理事は「盲導犬は視覚障害者にとって目であり体の一部だ」と訴えている。 共生社会の実現に向け、不当な差別を禁止した障害者差別解消法が2016年4月に施行され、3年がたつ。障害者が安心して暮らせるよう、地域生活のさまざまな場面で先入観や偏見、誤解をなくし、不利益を受けたり孤立したりすることがないようにするのは当然のことだ。だが、現実は厳しい。調査がそうした実態を浮き彫りにした。 5月24日付朝刊では、福祉先進国と言われる北欧フィンランドの障害者福祉や教育について...
2019.03.25 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「虐待防止の取り組み伝えて」虐待防止の取り組み伝えて千葉県野田市の小学4年女児が親から虐待を受けて死亡した事件は、社会に大きな衝撃を与えている。本紙は事件発生までの経緯、その後の状況を丁寧で分かりやすく報道している。 この事件では、市教委や児童相談所などの不手際が相次いで発覚。その都度、専門家による問題点の指摘が報じられている。事件の報道だけでなく、隠れた問題点を浮き彫りにすることも報道機関の重要な役割だが、本紙はそれにとどまらず、虐待防止の記事を積極的に掲載している。 2月19日の朝刊では、県警が2018年に対応した児童虐待の件数(速報値)は414件(前年比24件増)で、現在の統計を始めた12年以降、過去最悪を3年連続で更新したことを棒グラフを添えて紹介した。件数が増えた背景に...
2019.01.29 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「障害者と地域に”つながり”」障害者と地域に”つながり”中央省庁や自治体が障害者の職員募集で、「自力通勤」や「介護者なしでの職務遂行」を条件にしていた問題が報道されたのは昨年秋。11月2日の本紙「表層深層」は、無自覚な差別意識が根底に存在することを指摘し、介助付きで働く当事者の憤りも伝えた。また、12月2日は「核心評論」で、中央省庁の障害者雇用水増し問題について、死亡者や単に視力が悪い人を算入する手口の悪質さ、第三者検証委員会がまとめた報告書の手ぬるさを指弾した。これらの記事を読み、社会に根深く残る障害者に対する偏見、無知にがくぜんとした方も多いだろう。 障害者差別の実情を正しく伝えることは報道の重要な役割だが、本紙は地元紙ならではの取材力で、県内の障害者雇用に関する取り組みを積極...
2018.10.30 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「女性議員活躍へ環境整備を」女性議員活躍へ環境整備を今年5月、国会と地方議会選挙で候補者の男女比をできる限り均等にするよう政党に求める「政治分野の男女共同参画推進法」が成立した。本紙は7月1日付「ニュース早分かり」で、日本の女性議員は国際的に見て大変少ないことを指摘した。国際機関が発表した女性国会議員の割合(2017年・一院制または下院)の比較では、日本は10・1%で193カ国中158位。また、地方議会の女性議員の比率(16年12月時点)は12・6%で、女性ゼロの町村議会は3割を超すことを伝えた。 人口の半分は女性であるにもかかわらず、議員が男性に偏っている現実に驚いた方は多いだろう。6月3日付「核心評論」でも指摘していたように、政治に男女双方の視点が反映されなければ政策に偏りを...
2018.09.03 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「子育て支援一層充実を」子育て支援一層充実を 東京医科大の不正入試問題で、内部調査委員会が記者会見して大学への報告書の内容を公表した。その内容を本紙は8日付朝刊で詳報。大学が女子受験生を減点した理由について、報告書は結婚や出産を踏まえ「年齢を重ねるとアクティビティー(活動)が下がる」という考え方があった、と指摘したことが書かれていた。これは女性の活躍を妨げるものであり、憤りを感じた方は多いだろう。 総務省の労働力調査などによると、15~64歳の女性の就業率は2007年は59・5%だったが、17年には67・4%へ上昇している。しかし、長時間労働を前提とした労働慣行などが依然として根強いという現実がある。仕事と生活の両立ができずに就業の継続やキャリアアップを諦める女性も多く、約6...
2018.06.19 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「社会が子育て認識を」犯罪被害者の実情伝わる本紙の魅力の一つは、多方面において、子どもに関する記事が多いことだ。 5月11日付夕刊では、県内の子どもたちが携帯型ゲーム機を使ってインターネットに接続している現状を、保護者の約4割が把握できていないことを大きく報じた。2017年度の県青少年ネット利用実態調査で浮き彫りになった“現実”に驚いた方は多いだろう。 さらに、17年には会員制交流サイト(SNS)がきっかけで、性犯罪などの被害に巻き込まれた子どもが全国で1813人いたという警察庁の統計も掲載し、注意を喚起。いずれも子どもを犯罪から守るために保護者や関係機関が認識、共有すべき重要な情報だ。 少子化が進む中、大分合同新聞社は07年度から、地域de子育て応援キャンペーン「こども...
2018.04.02 08:00大分合同新聞 私の紙面批評「犯罪被害者の実情伝わる」犯罪被害者の実情伝わる地方紙の魅力は、地域に密着し、正確な情報を伝え、地域の発展に寄与することだと思う。本紙の犯罪被害者支援に関する一連の記事を読んでいて、地方紙の良さを改めて感じた。 冬季五輪・パラリンピックが開催され、人々の話題や関心、紙面づくりが偏りやすい時期であっても、本紙は県内の犯罪被害者支援に関する報道に力を入れている。2月22日付夕刊では、県が被害者や遺族の精神的負担を減らす目的で「支援ノート」の作成に乗り出すことを、京都府が導入したノートの写真を添えて紹介した。犯罪被害者支援条例の制定に向けた各市町村の動きも、その都度、丁寧に報じていて、犯罪被害者の尊厳が守られる社会になってほしいという記者の熱い思いが伝わってくる。 同28日付朝刊は、...