大分合同新聞 私の紙面批評「若者と地域をつなぐ」

若者と地域をつなぐ

 大分合同新聞創刊130周年を記念し、朝・夕刊で展開した年間企画「青が咲く」が3月で終了した。この企画は、若く青々とした学生や若者たちに密着し、地域社会の課題や現状に触れながら、体験型の主権者教育を通して成長していく姿をルポ形式で連載した。

 地元の大分大学と「とことん地域密着」を企業理念とする大分合同新聞社との連携授業の開始に大分の地域づくりに対する期待を抱いたのは私だけではないだろう。少子高齢化が進む中、2016年夏から選挙権を手にした18歳、19歳の若者の意見はとても重要だ。子どもの貧困など大分の抱えている課題に、地元の学生が真剣に向き合い、対策をじっくり考えるという企画は、学生にとっても社会にとっても意義がある。大分の将来を担う人材の育成も期待できると思う。

 連載の第8部(3月6~10日・朝刊)は、連携授業が終わり、社会に目を向けた受講生たちの“その後”を追っていた。初回は「少しでもいい。役に立ちたい」という思いから、熊本県大津町を訪れ、熊本・大分地震で半壊した住宅で、解体前のごみ出しを手伝う姿が紹介された。「自分にできることをこれからも続けていこう」という、学生たちの熱い意気込みを感じることができた。

 翌日の紙面には、大分市にある子ども食堂「すみれ学級」でバイトに加わった学生の「私は必要とされている」という思いが描かれていた。学生たちが体験型の連携授業を通して意識の変化を感じ、自分たちにできることを実践し始めた様子から、1年間の授業の成果がうかがえる。

 「このままでよいのか」という焦り、将来への夢、社会に出る前の漠然とした不安…。自分の若い頃を思い出しつつ、若者たちを応援したい気持ちになった。

 人口の一極集中を改善するとともに、地方の人口の維持・増加を図り、少子高齢化に歯止めをかけなくてはならない。そのためには雇用確保、子育て支援などの推進が欠かせないが、いずれも容易ではない。そのような中、若者が地域の問題に向き合い自分の意見を持つこと、社会が若者の不安を理解することは、若者と地方を“つなぐ”きっかけになるように思う。

 今後も大分合同新聞ならではの企画、「青が咲く」のような大分を元気にする記事を期待している。

平成29年4月23日 大分合同新聞朝刊掲載