2020.02.06 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「同僚に横領のうわさ」※記事有同僚に横領のうわさQ 私の所属している組合の会計担当者が、組合から横領したといううわさを聞きました。忘年会で返還を求めたところ、「名誉毀損(きそん)で訴える」と言われました。名誉毀損になるのですか。A 人は、一定の社会的評価を受けて暮らしています。この評価(名誉)は、法的に守られるべき権利です。従って、そのことが虚偽であっても、真実であっても社会的評価を害すること(この場合、横領)を他の組合員がいる忘年会で、具体的に示すことは、原則として不法行為(名誉毀損)となります。 結果的に個人の名誉を毀損することになっても、事実を公表することが表現の自由(公共性、公益性)の観点から許される場合もあります。つまり、その行為が、公共の利害に関すること(事実の公共性)...
2019.11.26 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「離婚する夫婦の共有財産」離婚する夫婦の共有財産Q 私たち夫婦は、現在、離婚の協議中です。財産分与について教えてください。A 離婚をする夫婦の一方は、他方に対して財産の分与を求めることができます(財産分与請求権)。中心となるのが夫婦の共有財産の清算です(清算的財産分与)。 具体的な内容は協議や調停、審判、判決によって決められます。原則は2分の1で分与します。権利の行使は離婚後2年間までなので注意してください。 清算的財産分与の対象となるのは、夫婦の共同名義で取得した不動産や家具、家財などの「共有財産」のほか、名義は一方に属しているが夫婦で共有している不動産や車、定期預金、株券など「実質的共有財産」です。 こんなケースもあります。例えば夫の経営する会社の資産は法人格が別なので、本...
2019.09.17 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「公証人が作る公正証書」公証人が作る公正証書Q 友人から金を貸してくれと頼まれました。公正証書を作成した方が良いと聞きましたが、公正証書について教えてください。A 契約の成立や一定の事実について、公証人役場の公証人が作成する書面を公正証書と言います。法務大臣が任命する公的な権威のある公証人が作成するので、後日、公正証書の記載事項を争うことは難しく、原本が公証人役場に保管されているので改ざんや紛失の心配がありません。 判決や和解調書と同様に金銭を支払わない人に対しては、裁判を起こさなくても公正証書でいきなり強制執行ができ、時間と経費が節約できて大変便利です。公正証書が執行力を持つためには(1)金銭の一定の額の支払いなどの文言(2)不履行のときは、直ちに強制執行に服する旨の強制執...
2019.06.28 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「前夫の生命保険金は「遺産」か」前夫の生命保険金は「遺産」かQ 先月、前夫が亡くなりました。相続人は前夫との間に生まれた私の子と後妻の2人です。後妻には数千万円の生命保険金が支払われています。遺産分割で生命保険金は考慮してもらえるのですか。A 民法903条は、被相続人から特別に遺贈や贈与を受けた人が共同相続人の中にいる場合は、平等に相続手続きができるよう特別受益規定を定めています。 生命保険金は、生命保険契約に基づき保険金受取人に発生する権利で、前夫の遺産ではなく、遺贈や贈与でもないので原則として特別受益にはなりません。 しかし、最高裁判決で「保険金受取人である相続人と、その他の共同相続人の間に生ずる不公平が、到底是認することができないほど、著しいものであるという特段の事情がある場合...
2019.04.11 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「遺産分割前の預貯金利用」遺産分割前の預貯金利用Q 先日、父が亡くなりました。相続人は私と弟の2人ですが、遺産分割協議に時間がかかりそうです。葬儀費用や税金の支払いに充てるため、父名義の銀行預金は使えますか。A 最高裁判所大法廷2016年12月19日は、相続開始と同時に各共同相続人は、相続分に応じて当然に預貯金債権を分割承継するとの考え(従来の判例)を変更し、「預貯金債権(普通も定期も)は遺産分割の対象となる」と決定しました。従って、相続人は全員で共同しなければ預貯金の払い戻しを受けることはできません。そうすると例えば、相続人の一人が行方不明などの事情で遺産分割成立までに時間を要する場合、葬儀費用や税金などの支払いがすぐにはできなくなります。 この時、相続人に自己資金や遺産とは...
2018.12.25 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「死亡事故、親の監督義務」死亡事故、親の監督義務 Q 男子児童が蹴ったサッカーボールが校庭から道路に転がり出て、これを避けようとしたバイクの運転手が転倒して死亡した事故がありました。最近、男子児童の親の賠償責任を否定した判決が出たと聞きました。どういう内容でしょうか。 A 最高裁判所が2015年4月9日に出した判決のことですね。民法は、責任能力(自分の行為が違法なものとして法律上非難されることを認識し得る能力)がない子ども(責任能力の有無の境界線は、12歳前後)が他人に損害を与えた場合、監督を怠った親が賠償責任を負うと定めています(714条)。 親は子どもに対して、生活の全般にわたり指導教育する義務があります。親の監督義務の範囲は極めて広く、そのため、これまでは親が免責される事...
2018.10.15 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「元妻が慰謝料追加請求」元妻が慰謝料追加請求 Q 妻に100万円の慰謝料を支払って離婚しました。「これで一切終わり」という約束でしたが、妻はさらに100万円を請求してきました。どうしたらよいでしょうか。A そもそも、あなたに慰謝料を支払う義務があったか否かが問題です。慰謝料の発生原因の事実(不貞や暴力など)がなければ、100万円を支払う必要もなかったことになります。 しかし、一度支払った100万円を取り戻すことはとても困難です。そこで、100万円の追加請求について冷静に対応することが重要です。そのためには、「これで一切終わり」という約束が夫婦間でされていたことを証明する必要があります。 私たち弁護士が依頼を受けて和解(示談)するときは『当事者双方は、本件離婚に関し、100万円...
2018.08.06 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「認知症の親の財産管理」認知症の親の財産管理 Q 私の父は、高齢で認知症が進み、判断能力がほとんどありません。高齢者を狙った犯罪もあり、財産管理にも不安があります。父を保護するために、何か良い方法はありませんか。A 成年後見制度を利用してはいかがでしょうか。判断能力の不十分な人を保護し、支援する制度で、民法の定める法定後見制度と、任意後見法の定める任意後見制度があります。 ▽法定後見制度 民法は、本人の判断能力の減退の度合いに応じて、後見、保佐、補助―の3類型の制度を定めています。これらは、家庭裁判所が申し立てに対し、開始の審判を出し、それぞれ後見人、保佐人、補助人を選任するものです。本人の判断能力の状態に応じて、後見人、保佐人、補助人の権限(財産管理への干渉の度合い)が異な...
2018.05.28 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「『証拠不十分』借金、返済されず」「証拠不十分」借金、返済されずQ 友人に200万円を貸しました。信用して書類は何ももらっていません。友人が返済しないので裁判を起こしたところ、「借りていない」と主張し、裁判官からは証拠不十分と言われました。真実が通らないことがあるのですか。A 判決を下す裁判官は、あなたと友人のどちらが真実を言っているのか分かりません。そこで、友人に貸したのが真実であると裁判官が確信を抱くように努力しなければなりません。この努力を「証明」といいます。努力の柱が「証拠」の提出です。日本では、証拠は当事者(原告や被告)が提出することになっています。裁判所から進んで探したりしません。これを「弁論主義」といいます。 今回のような「貸金返還請求訴訟」では普通、原告側から金銭借用証...
2018.03.16 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「受忍限度超えた騒音」受忍限度超えた騒音Q 私の家の隣に住んでいる人は毎年、米や麦を収穫した後、乾燥機を動かしています。そのため騒音に悩まされ、人間らしい生活をすることができません。どうしたらよいのでしょうか。A あなたには、人間として生存する以上、人間としての尊厳にふさわしい生活を営む権利があります。各人の人格に本質的な生命や身体、精神、生活に関する利益の総体を「人格権」といいます。受忍限度(我慢しなければならない限度)を超えた騒音は、人格権を侵害していると評価されます。 自治体によっては、条例で、地域別や時間帯別に騒音の規制基準を定めているところもあります。住んでいる自治体に規制条例があるかどうか、問い合わせてみてください。騒音が規制値を超えていれば、行政の指導を求める...
2018.01.09 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「義父の遺産相続割合」義父の遺産相続割合Q 先月、私の義父が亡くなりました。相続人は夫と義姉、義妹の3人です。義姉も義妹も相続分を主張しています。夫は義父の遺産を均等に分けたいようですが、長男の夫が遺産の全部を相続するのが筋ではないでしょうか。A 結論的には、相続人3人で均等にすべきでしょう。旧民法では家督相続、すなわち戸主たる地位(これに「家」の財産が随伴する)の承継も行われていたので、長男のみが義父の全遺産を相続するという考えもありました。しかし、1947年の新憲法の施行に伴い、「家」の制度(「戸主」の制度)が全廃され、家督相続はなくなりました。 現民法では、共同相続が開始され、きょうだい3人が義父の遺産を3分の1ずつ相続します。従って、義姉や義妹が相続分を主張するの...
2017.10.31 08:00大分合同新聞 法律あれこれ「土地の所有権」土地の所有権Q 自分の所有地として長年管理してきた土地の名義が、亡くなった他人の名義であることが分かりました。土地の所有権を時効取得できると聞いたのですが、どういうものですか。A 土地を自分の所有地として長年使用している場合、一定の要件((1)、(2))のもとにその土地の所有権を時効取得できます(民法第162条)。長年続いた事実状態を尊重し、法律関係の安定を図るのが趣旨です。 (1)平穏公然な自主占有 自主占有は、自分が所有者であると信じて使用することをいい、賃借人の占有(他主占有)は含みません。 自主占有の認定には、▽事実的支配の有無▽公租公課の負担の有無▽時効成立の結果、所有権を失う真実の権利者に補償や対価が与えられているか▽占有期間▽真実の権利者...